長井式植毛

世界ナンバー1の植毛医で毛髪移植を学問に変えた、ロンシャピロー医師の初めての弟子として教わった内容に、植毛医として20年以上の経験と工夫をプラスしました。その結果私自身の術式に対して2017年に特許庁の登録商標を得て、その後も常にアップデートしています。
1.登録商標
我が国における植毛手術とは、ほぼ別のものと言っても良い内容で、理論と科学的根拠に基づき、芸術的な結果を紡ぎます。

明確な違いを説明します。

1.丁寧な診察

薄毛歴、治療歴、家族歴、視診、スコープ診察から、正確な診断を行います。AGAの進行が進んでいる場合や円形脱毛症など、オペが患者さんの不利益になると判断した場合は、オペ希望であってもオペをお断りする場合もあります。
2.スコープ画像

2.移植部デザイン

毛髪移植医の教科書、ヘアートランスプランテーションの中のロンシャピローのチャプターにも書いてあるように、ハエギワにおいてはM字の角度を和らげてもM字自体は必ず残し、今の生え際の形をまねて、何よりも自然に見えるデザインを行います。
3.デザイン画像
頭頂部はAGA処方で改善することが多いので、まずは処方を行いその効果を見て、追加で最小限の植毛を予定します。
ハエギワを下げすぎるのは、将来薄毛が進行した際に修正不可能な姿になる可能性が極めて高いため、慎重に決めます。
4.ひどい生え際画像

3.移植株数の決定

単位面積あたりの密度30-35株/㎠を基準にして、移植部位の面積を計測して、移植株数を正確に算出します。これに加えてハエギワ前列から4列目までの密度を更に高めると、ハエギワの境界線がより明確になります。
頭頂部は疎毛であっても、細い既存毛が生えていることが多いので、これを考慮して移植株の数を決めます。
5.粗毛でも生えている拡大画像
眉毛は患者さんの希望のデザインを自身で書いてもらい、それに合わせて毛穴を作成して必要な株数を決定します。
ケガややけど痕などの瘢痕性脱毛部位は、その瘢痕の程度によっては生着率が低い可能性もあるため、術前に瘢痕部位チャートテストを行い、テスト植毛を行ってから結果が良ければ、本植毛を行います。
移植毛決定で大切なことは、移植毛の数には限りがあることを忘れることなく、無駄な採取をしないことです。

4.移植株の採取

株の採取方法には、昔から行われている頭皮を部分的に切除して株を採取するFUSS: Follicular unit strip surgeryと、ひと毛穴ごとくり抜き採取する FUE: Follicular unit excision の2種類があり、どちらも毛根切断をいかに抑えて効率良く採取できるかで、将来に残せる後頭部の移植毛の数が決まります。高い技術の施術を行えば、FUSSで6000株、FUEで5000株ほどの採取が可能と言われています。

FUSS

皮膚の下の毛の向きにはかなりばらつきがある上に、直視することができない為、盲目的手技(ブラインドテクニック)と言われます。
6.毛根切断画像
この状態では技術のよしあしに関わらず、見えないという点で毛根切断は避けられないものでした。
これを解決するため2007年に長井式2段階切開法を開発して、直接毛根が見えるようにして毛根切断率を1%未満、採取率を99%以上にすることができるようになりました。
7.99%以上の毛根採取画像
また皮膚切除後の縫合部位が幅広くなるとその部位が無毛部となり、それが目立つ傷になることがFUSSのリスクでした。
8.FUSS傷画像
これに対しても創部の幅が2mm未満になれるように、長井式2段階縫合法を開発しました。この内容はHair transplantation 5th editionのChapter9c-2と付属のDVDをはじめ各植毛の本に載っています。
9.2段階切開法と縫合法の画像
9.2段階切開法と縫合法の画像
9.2段階切開法と縫合法の画像

FUE

FUEはパンチニードルを使って1毛穴毎に採取するため、線上の傷ができないというのがうたい文句であり長所です。
10.丸い採取痕画像
しかしFUEもブラインドテクニックのため毛根切断のリスクがあり、この技術の習得には時間がかかります。
11.不適切な採取で破壊された毛の画像
理論が分かれば誰でも必ずできるようになる、というものではないためです。そのためFUEの技術の修得を体系化し、すべての医師が安定してできるようにするために6年かけました。この結果、特殊なケースを除いて採取率90%を切ることはなくなりました。

5.毛根採取率

毛採取率は単純に何本の毛根を採取して、実際に何本採れたか、(何本を切断したか)を数値で現したものです。
12.画像と計算の仕方
12.画像と計算の仕方
国際学会的には80%以上であれば合格、実質的な数値は85%あれば問題ないと言われています。
逆に常に95%以上で採取できる医師はほとんどいないとされていますし、今までいろいろな術者のFUEオペを見てきましたが、90%を超える採取は2人しか見たことがありません。(2019年10月現在)
日本における色々なクリニックのHPにも95%以上という数値が書いてありますが、とても信じがたいと思っています。 もしそのようなクリニックでオペを考えているなら是非どうやって計算しているのか、また実際の採取動画を見せてもらうなど、確実に信用できることを確認することが重要です。
長井式植毛では全例最初に採取した10グラフトの引き抜きを行い、まず切断のチェックを行います。
13.テストFUE採取チェック画像
その後、最初のマス目で採取した株の切断チエックを行い、安定した採取のためのダブルチエックをして必要なら微調整をしていきます。
14.1グリッド目採取率画像

6.株の採取の密度

FUSSでは切除した部位の皮膚ごと毛が採取されるので、極端に密度がへることはありませんが、FUEにおいては過剰採取すると、その部位が透けてみえてしまいます。
15.透けている画像
実際に生えている密度の25パーセントを超えないように均等に採取することで、これを防ぐことができます。
16.透けていない画像
一度透けてしまったらそう簡単にこれを改善することは出来ません。
これについてもしっかり術前に聞いてみてください。

7.採取部位の実際

採取の際はまず採取部位に1cmのマス目を5か所書きこの密度を計測して平均の密度を出します。
この密度の25パーセント以上採取しないように設定して、採取の面積をきめます。
これが安定して安全な採取を行う秘訣です。

8.移植株の株分け

株分けは採取した直後の移植株を、均等な形と大きさに分けることをいいます。株分けをしない方がいいいといって株分けを行わない医療機関もあるようですが、それは違います。
ヘアートランスプランテーション第5版の中で、skinny graft VS chubby graft 細い株とふとっちょ株の生着率に関する比較という内容がありますが、株分けをしていないか、しても太めに分けた株と、株分けで正確に作成した細い株の生着率に変わりはなかったと結論づけられています。
採取しただけの株は拡大鏡で詳細に観察すると形はいびつ、大きさもまちまちです。
17.採取後のまちまち画像
これをそのまま植えることが可能だとしたら、移植用に新しく作成したその毛穴が過剰に大きいということに他なりません。
18.ホールスリットに植えた画像
それでもジャストフィットするわけではないので、術後の表面が凸凹していたり、出血をしたりそれがカサブタになってしまったりします。
傷やケガや手術直後はその周囲の血管は、壊れてしまっており、新しい新生血管が出来はじめるのが48時間後以降。それまでは血管からの十分な栄養の供給は見込めません。その間は、血漿成分からの栄養供給になるのですがそのためには、新しく作成された毛穴の内側面と移植毛がピッタリフィットしていること(接着)がとても重要です。
一般的な株分けでは、1本毛、2本毛、3本毛と本数ごとに分ける、CUT TO NUMBERですが、毛の太さにはバリエーションがあり、同じ1本毛でも大きさは均一でない場合もあります。
19.1本毛バリエーション
何よりも株が一番必要としているタイミングで、栄養が行きわたりにくくなり、株の生着にも影響をもたらすと考えられます。
これに対して長井式植毛では、1本毛は0.8mm、2本毛は0.9mm、それと3本毛は1.0mmと均等な大きさでわけるCUT TO SUZEを採用して、接着を確実にしています。
それが最も確実に行われるのがラインスリットに対する、CUT TO SIZEの株分けです。

9.毛穴の作成

一般的な植毛で作られる毛穴は、皮膚の表面に丸く開けられたホールスリットと言われる毛穴です。
(20.ホールスリット画像)
20.ホールスリット画像
私もチョイ式植毛針で一世風靡したチョイ医師から教えていただき、初期の2年間はこれを作成していました。しかしこの毛穴は実は移植毛に対して大きすぎて、カサブタがほぼ全例に出来て、接着が不十分なために手術の結果が安定しない、特に喫煙者や糖尿病等の生活週間病の方では問題でした。これを解決するのが極細のマイクロブレードで作成する線状の毛穴、ラインスリットでした。(図上段:ラインスリット、下段:ホールスリット)
(21.ラインスリット画像)
ラインスリットにフィットする株は、CUT TO SIZEでなければならず、ラインスリットとCUT TO SIZE株分けはお互いが呼応しています。

大きさだけが重要ではないのですが、ホールスリットで世界最小と紹介されている0.6mmのホールスリットと比べてみましょう。

  • 1本毛用に作成するラインスリットのサイズは0.8mm×0.1mm 面積は0.8mm×0.1mm=0.08mm
  • 直径0.6mmのホールスリットの半径は0.3mmですので、面積は0.3mm×0.3mm×3.14=0.2826mm

約3.5倍の大きさです。
数値化すると本当の事がよくわかります。
22.方眼紙に書いたホールスリットとラインスリットの画像

株の移植

1本毛は0.8ミリ、2本毛は0.9ミリ幅のラインスリットに植えていきます。
その際に施術者は、極細セッシを左右の手に一本ずつ持ち、丁寧に優しく株を掴みます。
この時に毛根先端にある毛球を強く掴んでしまうと、毛球が潰れてしまう為、毛球のすぐ上の毛根周囲毛根鞘を優しく持ちます。
23.株の把持の画像
次に植える株と比べて、スリットの方がほんの少し小さいため、利き手ではない手に持ったセッシで、慎重にスリットを開き、利き手のセッシで持った株を愛護的に入れていきます。
(24.スリット開く画像)
この株の移植の行程を人の手でセッシを使って行うことに対して、それ自体が毛球を破壊するとして、生着に関して否定している施設もあるようです。
半分は正しいと思います。
何故ならセッシを使う技術が低くければ、株より小さなスリットに入れられるはずもなく、強く掴んでしまうと毛球も破壊され、掴んでいる時間がかかりすぎると、株は乾燥して壊れてしまいます。

では半分は正しくないという訳は?

長井式植毛はとてもありがたいことに今年で23年目になります。もし結果が悪ければあっという間に淘汰されたはずと考えています。
特に生着に関して、他の術式に劣っていると感じたことは、一度もありません。
植毛針や専用の機器で株を吸引して植える術式は高い技術は必要なく、しかも容易にビギナーでもすぐに行えます。
これらと長井式の大きな違いは、個々の技術の研鑽は必要ですが、面倒でも手間がかかっても、1株でも多く生着させたいという事に尽きます。
世界のスタンダードは10年以上前から、ラインスリットにセッシで植える方法であることは、植毛の世界にいれば、誰でも知っていることです。

生着率

生着率という数値は、幻のようなものです。
長井式植毛の生着率は何パーセントですかと頻繁に聞かれます。
確かに色々なクリニックのホームページを見ると、生着率95%以上!と書いてあります。
どうやって計測するのでしょうか?
25.計測出来ない根拠の画像
通常は移植部位にも既存の毛が生えている事がほとんどで、AGAハミルトン分類の6型や7型の薄い部分にも、実は既存の毛が生えています。
26.拡大鏡画像

そんな既存の毛があるところに、移植株を植えて、どの毛が生着してどの毛が抜けてしまったか?なんてどうやって分かるのでしょうか?
ボランティアの患者さんで測ったと言われたこともありましたが、そうするためには、移植部位を正確にする為に、そこが分かるためのタトゥーを頭皮に入れて、何百、場合によっては千を超える株を計測するのです。これは私が体毛移植の実験を行った際にいれた「腕のタトゥー」ですが、これを頭に入れてでも採取率を計測してもいいとみなさんは思われますか?
27.腕のタトゥーの図
そんな事はほぼ不可能です。
その結果、生着率というものはまやかしのようなものということが分かると思います。
ですから私は、手術から1年後の満足度を上げるように努力していますと答えています。

麻酔

吸入麻酔や点滴麻酔で患者さんの意識をなくしてから、手術を始めるというのが一般的です。
意識がない間に手術が終わるということ自体は、患者さんとってメリットだと思いますし、私は否定しません。
一方で私にとって麻酔で最も大切なことは、安全に痛みを軽減することです。もし意識がなければ麻酔が効いているからか、術中に脳塞栓や脳出血などが起きたためなのか判断ができません。
これを防ぐために局所麻酔だけで痛みをコントロールするようにしています。少量の麻酔を丁寧に時間をかけて注入することで麻酔自体の痛みを軽減して、上眼窩神経ブロック、後頭神経ブロックを駆使してほぼ無痛状態とするおかげで、殆どの患者さんが移植の際には寝ていますし、術後の腫れも出にくくなりました。

拡大鏡使用

ラインスリットで作成した毛穴の大きさは0.8mm×0.1mmと0.9mm×0.1mm。
肉眼ではその0.1mmの差が分かるどころか、毛穴自体も見えないことが殆どです。
そんな状態で移植毛を植えようとしても、効率よく植えられないのは簡単にわかります。
そのため施術者の視力に合わせて、必ず拡大鏡を使用して移植を行います。

なぜ人の手の作業に拘るのか?

私の師匠のロンシャピローは、自身の手術の説明をする時、”State of the art”芸術的な施術という表現をしていました。
初めて見た、彼とそのチームが行う全ての行程が、それで生み出される結果が、本当にアートでした。
それが私にとっての基準ですが、以前FUE をサポートするロボットに関して、国際インストラクターとアジア人向けの改良を一生懸命に行っていたことがありました。
もちろんこのロボットはとても優秀で、アベレージレベルの施術者と同等のことが、ビギナーの医師でも極めて短時間で行えました。
しかし、その上を目指そうとしてその時のチームでいろいろな工夫を行いました。
パンチニードル先端の形状変更、ニードルの長さの延長、ニードルの直径の細小化などです。
しかしどれも安定した結果には結びつきませんでした。
それはどんなに優れたアルゴリズムを導入しても、ロボットだからなのだと思います。
超精密な線を引いたり、瞬時でとてつもない数式を解いたりというようなことではなく、自然で美しく見えるような結果を出すこと。
この「自然で美しく見える」というニュアンスこそ感覚的なものであり、感覚を持つヒトでなければ達成出来ないことだと思います。

機械を否定する訳ではありません。
現にFUE での採取は、パンチニードルを手で前後に回転させながら採る方法よりも、モーター駆動のパンチニードルで採取する方が、ずっと効率が良いからです。
しかし、これも腕が良くなければ、採取はうまくいきません。
私は現状においては、”State of the art”を貫き通したいと思っております。

施術時に両手を使う理由

普通は右利きか左利きのどちらか1つが利き腕であるのが当たり前で、日常生活で不自由なことは何もないと思います。

しかし手術中は、両手が使えた方がいい場合が結構あります。
キズつけたくない血管のすぐ右側にある組織を、ハサミで切らないといけない時、奥まった狭い部位の糸を結びたい時など。
植毛においてもそうです。左側に右手で毛穴を作るとき、術者の頭の位置を左に移動しなければなりませんが、頭の位置がかわることで、視界に見えるものの角度や向きが微妙に変わるのです。
(向きが変わって見える画像、明日オペ時に撮影)
左側の施術をうけもつことができれば、株を植える時に右側は右利きのスタッフと同時進行で行い、FUEパンチ採取する時も同様に同時に行うことができ、大幅な時間短縮になります。
サッカーのフェイントは左足、シュートは右足、テニスは左手、野球で打つのは左で投げるのは右手のように、元々利き手、利き足がなかった私には大きなアドバンテージになれました。

植毛オペをエンターティメントへ!

長井式植毛で私が常に心がけている一番大切な事は、安定して良い結果を出すことで2番目に大切なのは痛みを最小限にして、患者さんに気持ちよく手術を受けてもらう事です。

そのための努力と工夫を続かてきたおかげで、10人中3人の患者さんが、楽しかった、満足したと言ってくれました。

手術なのに、楽しかった?
信じられない返答です。

訳を聞くと、私が全工程を詳しく話しながら施術を進めることと、全てのスタッフが気軽に声かけをしてくれて、しかも術中ほとんど痛くないこと、最後に術直後に鏡を見ながら移植部位の説明を聞くことで、楽しみの方が優ったと言ってくださいました。

一般的には苦痛であるはずのオペが、楽しかったと言ってもらえたことが、大きな転機になりました。

これからは10人中3人と言わず、ほぼ全ての方が楽しかったと言ってもらえるように、更なる精進をすることに燃えています。